4月14日(土)、シネプレックスつくばにて。
 “光と影”の演出が素晴らしい。
 暗い部屋へと秘書が入ると、年輪の刻まれた声が響き渡り、火を点けるかのような音が聞こえ、赤い光が一瞬見えたかと思うと、執事によって室内のカーテンがさっと開けられ、ベッドから上半身を起こして葉巻を吸うチャーチルの姿がスクリーンに映し出されるシーンをはじめ、窓から入ってくる外の光も闇に包まれてしまいそうな、冷たくて重々しい下院の雰囲気も、まさに「映画!」といった感じである。
 また、ロンドンの街を歩く人々をカメラが横に移動しながら、でも、「どこにフォーカスしているのか分からないカットが続くなぁ」と思ったら、実は、車の後部座席からのチャーチルの“目”に映った光景であり、物語の後半で、彼が車を猛烈な勢いで飛び降りて重大な決断をする伏線にもなっており、観客を「あっ!」と驚かせて見応えがある。
 そして、「不屈の精神を持った男」ではなく「己の信念が正しいのか迷い悩む男」としてのチャーチルを演じたゲイリー・オールドマンをはじめ、そんな自信を失いかけた英国首相を励まし支えた妻に扮したクリスティン・スコット・トーマスや、はじめはチャーチルを嫌いながらも後に彼を理解する国王ジョージ6世にベン・メンデルソーンといったキャストの演技がとてもいい。
 まぁ、地下鉄でチャーチルが「声なき大衆の声を聞く」シーンは、観ているこっちが恥ずかしくなるくらい大げさだし、議員たちを前にしてチャーチルが放つ大演説は、スクリーンをぶち壊すくらいにもっと盛り上がってほしかったところではあるけれど・・・。
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 4月7日(日)、シネマサンシャイン土浦にて。
 監督のジャウマ・コレット=セラと主演のリーアム・ニーソンのコンビは、思いもよらぬアクシデントに巻き込まれ、事件の黒幕に己のアイデンティティーを揺るがされて苦しみながらも、「人間として正しくありたい」と決心して行動を起こす主人公の物語をクリエイトしてきた。
 4度目のタッグとなる本作でも映画のスピリットは変わらないが、『アンノウン』(11)のような不条理な設定は弱くなり、列車内でのサスペンスに「これでもか!」とアイディアが連打され、ジョセフ・サージェントの『サブウェイ・パニック』(74)のような、「職人気質の娯楽映画」としての雰囲気が、これまでの作品より強くなっている。ニーソンの体が歪む瞬間をスローモーションで撮りたがるのは、コレット=セラの拘りか?
 物語の交通整理が少々雑でバタバタしている感じだし、作品の前半でなんとなく犯人が誰であるか分かってしまうのではあるが、がらんとした車両内での格闘を捉えたワンカットは緊張感があるし、後半はスケールの大きいアクションが炸裂し、とにかく飽きさせない。極限状態を切り抜けてゆくことで列車の乗客たちが主人公を徐々に信じてゆく展開もアツい。ラストも痛快。
 3月24日(土)、ヒューマントラストシネマ有楽町にて。
 監督のピーター・ランデズマンの、『コンカッション』(15)で顕著にあらわれた色彩への拘りは、本作でも、ブルーやイエローを基調とした陰影を押し殺すかのような映像で発揮されている。特に、雨の中、コインランドリーの電話ボックスから、主人公が新聞記者にウォーターゲート事件の情報を提供しようとするシーンは、まるでエドワード・ホッパーの絵画のようで、目を引きつけられずにはいられない。
 監督デビューとなった『パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間』(13)から本作まで、ランデズマンは実際に起こった事件から“アメリカの闇”を引き出してきたが、そのような重苦しいテーマを手がけながらも、困難に巻き込まれて心が挫けそうになっても、崩壊を喰い止めようと踏み堪える“家族の絆”を描いており、一見すると不必要に感じられるが、主人公が失踪した娘を見つけ出そうとする挿話こそ、ランデズマンとしてはどうしても撮りたかったに違いない。
 実在の登場人物たちをきっちり出そうとしたためか、描写が雑なキャラクターもいるし、物語も少々軽い感じがしないでもないが、本作のスピリットは、主人公であるFBI副長官のマーク・フェルトを演じたリーアム・ニーソンだ。疲れを滲ませた表情ながらも、ホワイトハウスを見つめる眼光は、まるでターゲットを射抜くようである。実際にフェルトはニクソンという名の大統領を辞任に追い込んだのだから・・・。


追記:監督のピーター・ランデズマンは、「エドワード・ホッパーの絵画のように鮮烈で美しい作品にしたいと思いました」と、本作のパンフレットの「監督からのメッセージ」に書いています。作品を観ている時に「あ、エドワード・ホッパーの絵みたいだ」と感じたので、短評に書きました。パンフレットから剽窃したわけではありませんので、念のため。
 3月11日(日)、シネマサンシャイン土浦にて。
 前半はスパイ映画のテイストが強く、主人公のブラックパンサーをリーダーとして行動し、ハイテクなガジェットを使用しまくるチームの行動は、まるで『ミッション:インポッシブル』シリーズのようである。
 特に、韓国の違法カジノでのアクションは長回しを使った緊張感があり、後半ではCGを使用して、ブラックパンサーとライバルのキルモンガーが格闘しながら落下するカットを、「これでもか!」と言わんばかりの迫力で描いている。
壮大な神話のような物語であり、『アイアンマン』シリーズや『マイティ・ソー』シリーズで描かれていた“家族”が、本作でも作品の根幹となっている。まぁ、マーベル作品だけではなく、『マン・オブ・スティール』(13)や『ワンダーウーマン』(17)といったDC作品でも、“家族”は描かれているから、ヒーロー映画では普遍的なテーマなのかもしれない。
 やんごとなきヒーローの物語としてカッコイイし、けっこうヘビーな展開で下腹にズンとくるし、王位継承の儀式とかアフリカ文化へのリスペクトは理解できるけど、もうちょっと展開がタイトだったらなぁ・・・。
 3月9日(金)、シネプレックスつくばにて。
 “彼”と愛を交わした後、主人公である声を出せない掃除係の女性が、バスの窓ガラスについた雨粒を指でなぞると、まるでダンスをするかのように動き出したり、言葉を話せない“彼”に、「あなたには決して分からない 私がどんなにあなたを愛してるか」と歌の歌詞を使って語りかけたと思ったら、次の瞬間にはモノクロのミュージカルになって“彼”と踊っていたりと、ロマンティックな場面が素晴らしい。
 特にラストで、彼女の首についていた「引っ掻き傷」が変化するところは、モノローグが挿入されることで、「欠点が実は・・・」というおとぎ話として成立させながら、社会的マイノリティが奮闘する本作のテーマと相まって、とても美しい。
 「緑」を基調とした色彩に、主人公が恋をしたことで、少しずつ「赤」が入ってくる美術にも引き込まれるし、自分の気持ちを手話で交わす主人公と“彼”のシーンは、まるでサイレント映画そのものだ。彼らを苛める男を演じたマイケル・シャノンは、「認められたい」という気持ちによって狂ってゆく人間の悲劇を漂わせていてウマイ。
 物語の語り口は鈍重ではあるが、映像のマジックに見惚れてしまう作品となっている。
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