10月21日(日)、シネプレックスつくばにて。
 正体がよく分からない敵と闘うことになる物語は、『Mr.&Mrs.スミス』(05)を手がけたダグ・リーマンらしいが、仲間が瀕死の状態で、救援を呼ぼうにも無線を破壊され、自らも致命的な傷を負い、空疎なまでに広いイラクの砂漠で孤立した主人公を、徹底して突き放して描いた本作の息苦しさは尋常ではない。
 自分の過ちに真正面から向き合ったアメリカ兵にむかって、「だから何なの?」という声が聞こえてきそうな、まるで“現実”がフィクションに不意に顔を出したような、胸クソ悪くなるほどの非情な展開は、通常の娯楽映画では考えられないくらいサディスティックだ。どうしたことか、本作を観ていて、ジャンルの異なる『泳ぐひと』(68)を思い出してしまった。あの作品も寒々しかったものなぁ・・・。
 何もカタルシスを残さないラストは、まるでアメリカという国家がイラク戦争で陥った“蟻地獄”のようであり、『フェア・ゲーム』(10)でも政府に対してストレートな批判を投げかけていたリーマンらしい衝撃作となった。
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 11月4日(土)、シネプレックスつくばにて。
 主人公である酒浸りのダメ女と怪獣のアクションがシンクロするというワンアイディアで押し通す映画かと思いきや、そんな彼女が自らの責任を自覚して成長してゆく物語でもあり、それでいて田舎町で燻ぶっている男の心の闇も描かれ、けっこうシリアスなのだ。
 それでも、いきなり『パシフィック・リム』(13)みたいな展開になったり、ラストの“大逆転”は低予算を逆手に取った「一点豪華主義」が炸裂したりと、一言では形容しがたい不思議な雰囲気を放つ作品となっている。
 まぁ、「なぜ主人公と怪獣の動きがシンクロするのか」という謎は、物語の後半で明らかにはなるのだが、ちょっと理屈をつけ過ぎかなぁという気がしないでもない。
 とにもかくにも、主人公を演じたアン・ハサウェイの、トンデモ現象に自分が関わっていることを知って、大きな目玉でビックリする演技がグッドである。
 11月9日(木)、シネマサンシャイン土浦にて。
 迫り来る大勢の敵を、主人公である雷神のソーが、ハンマーを投げて一気に倒してしまうオープニングが、レッド・ツェッペリンの「移民の歌」とも相まって、無茶苦茶に痛快。CGはこれくらい派手に使用してほしい、と思わせるかっこいい場面である。女戦士のヴァルキリーの回想シーンも、ニブい色彩が残酷ながらも冷たい美しさを放っている。
 それぞれの登場人物もキチンと描けており、特に、格闘好きの独裁者であるグランドマスター役のジェフ・ゴールドブラムの怪演がイイ。裏切り者の戦士を演じたカール・アーバンもけっこうオイシイところをさらってゆく。ソーを演じるクリス・ヘムズワースは、完全に主人公を自分のモノにしているし、ソーの弟である油断のならないロキを演じるトム・ヒドルストンは、シリーズ全てで相変わらず快調。
 北欧神話だけではなく、“サムソンとデリラ”や“十戒”をも想起させ、それでいて、いかようにも荘厳なテイストにできそうなストーリーをコメディとして成立させてしまったのはスゴイが、もうちょっと「笑い」の部分が弾けていても良かったかなぁ・・・。
 10月1日(日)、シネプレックスつくばにて。
 ナチ親衛隊の大将であるハイドリヒの暗殺を、命を懸けて実行した主人公たちが、ナチによる苛烈な報復によって、多くの一般市民を巻き添えにしながら追いつめられてゆく顛末を、目を覆いたくなるような苦さを放ちながらも、エンターテインメントとしてもしっかりと成立させている映画だ。
 特に、計画遂行なのに仲間が姿を見せなかったり、標的を目の前にして銃が故障するアクシデントに見舞われたりと、不穏な空気を漂わせる描写を積み重ねることで、暗殺実行のシーンには異様なまでの緊張感が漲っており、クライマックスとなる教会での攻防戦も、大量に投げられる手榴弾と尽きることなく放たれる機関銃の弾丸や、カタコンベに突っ込まれたホースからの大量の放水によって、逃げ場を失った主人公たちの絶望を突きつけられて息が詰まるほどであり、「もう止めてくれ!」と思わず叫びたくなるほど容赦がないのだ。
 自分たちが生き延びられる可能性のない計画を実行しようする主人公たちの焦燥は、第二次世界大戦による国家間の駆け引きの犠牲となり、先行きの見えないチェコの人々の不安と重なるようであり、時代に翻弄された人々を描いた戦争映画の傑作となった。
 9月26日(火)、キネマ旬報シアターにて。
 多くのユダヤ人を絶滅収容所へと送り、彼らの命を奪っていったアドルフ・アイヒマンを、第二次世界大戦後のドイツで裁くために奔走する検事長のフリッツ・バウアーの物語が、過去と向き合わねばドイツの前進もないとする彼の信念に呼応するかのように、奇を衒わない誠実な演出で展開されてゆく。
 「狩りは?」と元親衛隊の部下に訊かれた時、「する。動物以外の獲物をな」と挑むような眼光で返答するシーンや、元親衛隊少尉である連邦検事局のゲープハルトに捜査を妨害されて、「私はこの国の敵なのか?」と力を落として階段に座り込んでしまう場面で、バウアーの強さと弱さを描くと同時に、戦後のドイツでもナチスの生き残りが国家の要職に就いていた事実も明らかにしており、“くたばれ ユダヤ人!”と書かれた脅迫状が自宅に届き、狼狽するバウアーの姿が映し出された時、反ユダヤ主義の根深さも感じさせるのである。
 アイヒマンがブエノスアイレスに潜伏している証拠を見つけ出すところはなかなかサスペンスフルであり、もうひとつのテーマである「同性愛」が徐々に物語に絡んでくる構成は驚いたが、それもやはり戦後のドイツを描くためのキーワードだ。
 作り手の実直な姿勢が少々堅苦しい感じがしないでもないが、アイヒマンの身柄拘束への執念は、強制収容所からの釈放と引き換えにナチスへの服従を誓約してしまった過去への後悔と己の尊厳を賭けた闘いでもあったことが、「暴政に服従してはいかんのだ」というバウアーの言葉に熱気を与えており、苦い結末を迎えても再び立ち上がろうとする不屈の精神に圧倒される力強いメッセージを放つ作品となった。
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