5月24日(木)、MOVIXつくばにて。
 数日後に売却するであろう、先祖代々受け継がれてきた広大な土地を、主人公たちが見納めにと遠くから眺めるシーンと、昏睡状態となった妻の思い出を、娘たちと主人公が懐かしげに語り合うシーンが、絵葉書のように美しい。前者は海の青を引き立てる日差しが、後者は砂浜を赤く染める夕日が、いかにも絵にかいたようなハワイにぴったりなのだ。
 この二つのシーンが記憶に残るのは、物語のほとんどが、曇天のハワイという、ありきたりなイメージから遠く離れた空模様の下で展開されるからだ。
 妻に浮気相手がいたことを長女から教えられ、真相を知っている親友夫妻の家まで、制御できない感情をなんとか抑え込むかのように、住宅地をドタバタと走ったり、発見した浮気相手を追いかけ、垣根から顔を出して様子を窺ったりする主人公の姿は、本人が一生懸命なぶん余計に滑稽だが、光の射さない曇り空の下では、彼の行動に悲哀さえも感じるのだ。
 それだけではない。周りにあるイスをいらだたしげに次女が投げ込むプールには、たくさんの落ち葉が浮いており、空の色を映し出したかのように、決してきれいでも澄み切ってもいない。母親が永遠に目を覚まさないことを知らされ、溢れだす涙を見せまいとプールの中に潜りこみ、悲しみを必死でこらえようとする長女の姿は、情けない姿を晒しながらも、なんとか家族の絆を繋ぎとめようとする、主人公の必死さの映し鏡のようでもある。
 結局、愛する人の思い出など、時が経てば常夏の自然のように美しくなるもので、今を生きる人々は、すっきりとしない天気を気にする余裕もなく、目の前の出来事に慌てふためきながら日々を積み重ねてゆくことしかできないのかもしれない。
 それでも、互いのわだかまりをといて人々は理解しあえるし、アイスクリームを食べながら家族とテレビを見るやすらぎの時はそっと訪れる・・・。天国でも地獄でもない、どっちつかずの“現実”に確かな絆が存在することを、この作品は静かに囁いている。
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