10月26日(金)、新宿バルト9にて。
 両腕を大きく振りながら刑務所内をがむしゃらに走り抜ける姿や、獲物を狙う鷹のような目で標的を狙撃するシーンは、『リーサル・ウェポン』(87)の主人公を想起させ、囚人から瞬時にカネを掠め取るようなセコい手業を使いながらも、大胆な策略によって巨悪を壊滅させていく一匹狼の行動は、まるで『ペイバック』(99)であり、まさに主演であるメル・ギブソンの総決算だ。
 また、強盗仲間の死体で悪徳警官の平手打ちをよけたり、娼婦に敵をいたぶらせたりする、悪趣味スレスレのユーモアも楽しい。オフィスビルで悪党どもを爆死させ、雨のように降り注ぐ大量の水の中、傘を差して悠々と犯行現場を後にするシーンは、狂気と笑いが危ういバランスで均衡し、いかにもギブソンらしい。
 しかし、ギブソンは頑張っているのに、物語がいまひとつ弾けない。
 「よい子のみんな」に語りかけるギブソンの声は、凄惨な暴力の中にトボけた味を引き出しているが、自分の思惑を説明してしまっているため、主人公の突飛な行動の面白さに水を差しているのが勿体ない。主人公が少年とその母親を助けようとする動機も掘り下げが中途半端なため、後半のクライマックスの盛り上がりが幾分弱いのだ。
 そして、主人公自身が絶対的な窮地に立たされないのが、パンチに欠ける最大の要因である。囚人たちに蹴りつけられ、刑務所のボスに銃をつきつけられても、大して疑われもせず、敵同士で自滅しあうシーンばかりが突出し、観る者に手に汗握らせないのである。
 宙ぶらりんな説明と掘り下げを排し、“ボコボコにされて血だらけになる”というギブソンのオブセッションが描かれていれば、作品をより強烈なものにしていたかと思うと残念ではあるが、年を重ねても尖りつづけているギブソンの魅力が詰まった快作ではある。
 余談だが、本作の監督はギブソンの作品で助監督の経験があるので、その力量が認められての抜擢なのであろう。ギブソンが電話越しにクリント・イーストウッドの声をまねるシーンには笑ったが、弟子の監督作にも出演するイーストウッドに自分を重ねてたかったのかもしれない。そういえばイーストウッドも、自作でしばしば傷を負っていたっけ。
 
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