「エージェント・マロリー」を観た。

Category : 劇場公開作品

 10月5日(金)、シネプレックスつくばにて。
 どのアクションも多くのカットを割らずに撮影されており、登場人物たちの死闘から緊張感が伝わってくるが、互いが憑かれた様に顔を殴り続けたり、隙を見て投げ飛ばしたりする姿や、コーヒーカップでいきなり頭を叩いたり、ペンをナイフ代わりにして体を刺し殺そうとしたりする姿は、従来のアクション映画よりも泥臭く、生々しい。
 また、主人公を捕らえた保安官たちを組織の男たちが瞬時に射殺するシーンや、標的の背後から音もなく主人公が駆け寄って掴みかかるシーンなど、まるで空気のように、突発的という言葉さえも鈍重なほどに、暴力がいきなり人々に降りかかる。主人公に狙われた男が、岩をかきむしるようによじ登る姿は、どうしようもなく哀れで、滑稽だ。
 監督のスティーブン・ソダーバーグは、決してカッコよくなどない、不条理の塊のような「現実の」暴力を、従来のアクション映画へのアンチテーゼとして表現したかったのであろう。どのアクションにもヌメッとした居心地の悪さが染み出している。
 それでも、やはり映画好きの本性は隠せない。ユアン・マクレガーにアントニオ・バンデラスなど、脇役の俳優陣が妙に豪華であるが、ソダーバーグは『タワーリング・インフェルノ』(74)や『遠すぎた橋』(77)のような、スター総出演の70年代アクション大作を、ミニマムな規模で再現したかったのではなかろうか。いつの間にか物語からいなくなってしまうマイケル・ダグラスなど、まるで『アシャンティ』(79)のオマー・シャリフのようで、つい笑ってしまう。
 物語に驚きがあるわけでもないが、遊び心に溢れた映像と軽快な音楽が楽しい。まるで陰影を押し殺すかのようなデジタルのフラットな感触は、フィクションとリアリティの壁を取り払おうとするソダーバーグの演出と相性が良いのかもしれない。たとえ殺菌されたかのような映像の“清潔さ”が、劇場を後にした途端に観たことも忘れてしまうかのような、作品の“希薄さ”を助長していようとも。
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