「マルタの鷹」を観る。

Category : 劇場公開作品

 12月24日(土)、シネマヴェーラ渋谷にて。
 怪しげな男たちと一人の女性との間で繰り広げられる“マルタの鷹”を巡る争奪戦を掻い潜りながら、相棒を殺した犯人を見つけ出そうとする、私立探偵サム・スペードの活躍を描いた物語。
 スペードを演じるハンフリー・ボガートが素晴らしい。主人公の行動を通して事件の全貌が明らかになってゆくハードボイルドでは、いかに主人公が魅力的に描かれているかが作品の肝であるが、眼光鋭いタフな外見はもちろんのこと、身を守るためなら暴力を厭わず、検事や警察とも単身渡り合い、相棒の妻とも平気で不倫し、依頼人の女性とも関係を持つという、一見すると堕落した人物でありながらも、どんなことがあっても自分の信条を絶対に守り通す意志の強さを持つ男を、時にシニカルに、時に静かな熱を体に帯びながら演じている。
 特に、手に持ったグラスをいきなりテーブルに投げつけ、はったりを利かせて相手の出方を窺い、その後足早にドアに向かい、乱暴に閉めるシーンや、一瞬のうちに用心棒の動きを封じて銃を取り上げるカットなど、動きの素早さはもちろんのこと、検事に対して自分の意思を早口でまくしたて、途中で隣にいる書記に「書き取っているか?」と聞くシーンなど、とにかくボガートの演技の“速さ”は、この物語の展開の速さを体現していることは間違いないだろう。
 編集が少し乱暴なシーンもあるし、謎の女性を演じたメアリー・アスターにもう少しクールな魅力があれば、スペードの決断がより非情さを帯びたかと思うと残念だが、シドニー・グリーンストリートやピーター・ローレ、出番は短いながらもワード・ボンドらクセのある男優陣の充実が、それらを補って余りある。監督であるジョン・ヒューストンの、これがデビューとは思えぬ力強い演出によって、ドライな魅力に溢れた佳作となった。

追記
1.本作は1941年の作品であり、今回鑑賞したのは86分という、現在DVDで観ることができる100分のものより、14分短い短縮版である。物語前半の、殺された相棒の妻が事務所を訪れ、スペードと二人きりになった瞬間、いきなりキスしあうシーンや、秘書がスペードに忠告するシーン、フィルムのコマ飛びによるものかもしれないが、ピーター・ローレ演じるカイロの銃を一瞬で取り上げるカット、その他ところどころでカットが抜けている。
2.今回の雑記は、86分のヴァージョンを観た感想であり、100分のヴァージョンは傑作。前者よりもスペードの非情さが際立っている・・・とは言っても、やはりメアリー・アスターのインパクトがちょいと弱い。映画がよくできているだけに、余計に残念なのである。
3.DVDで気になっていた、ところどころ編集で無理して繋げたような箇所も、今回の上映でもともとの編集がそのような状態であったことを確認できた。正直なところ、重箱の隅をつつくようなものなので、あまり気になるほどでもないのだが・・・。
4.世間的にはボガートの代表作といえば「カサブランカ」(42)なのだろうが、私としては断然本作を薦める。「化石の森」(36)での目に狂気を宿した脱獄犯から、「ハイ・シェラ」(41)でのグッド・バッド・ガイへと、段々とその自らの魅力を映画の中に滲み出してきたボガートの、一つの到達点ではないだろうか。
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