「幸福」を観る。

Category : DVD

 1月1日(日)、DVDにて。
 殺人事件の捜査をしていくうちに明らかになってゆく、人間の持つ秘密や醜さに直面し、自らの生き方を見つめ直してゆく刑事たちの物語。
 捜査を通じて様々な境遇の人々の姿が描かれ、そのひとつひとつのエピソードは決して大きくないものの、刑事たち自身の抱えている悩みと絡み合って、厚みのある作品となっている。
 特に、殺された女性の父親(浜村純)が語る娘の人となりと、彼女と交際していた刑事(永瀬敏行)の知る“実像”とが食い違う場面では、本作の持ち味がよく出ているが、それを説明的な映像として展開させず、父親が話し終わった直後に刑事の回想をサッと挿入させることで、映像のテンポを途切れさせずにインパクトを残すところが、いかにも監督の市川崑らしい。映像の「繋ぎ」が実にスタイリッシュなのである。
 このキレの良い「繋ぎ」は、終盤での、犯人を怒りにまかせて殴り続ける永瀬を力ずくで止める主人公(水谷豊)の、驚きと戸惑いの入り混じった表情を切り取った、一瞬のカットがあることで、事件のやりきれなさが観る者に伝わってくるのである。
 水谷の演技は、一見すると過剰でわざとらしいのだが、捜査の進展について話すシーンや、二人の子供たちに手を焼きながらも少しずつ絆を深めてゆくシーンなどで、その鼻につくようなトーンが自然と共演者たちと溶け込み、味のあるハーモニーを映像から放っている。入院中の部屋でケンカする子供たちを両腕でギュッと抱えて叱り、自分を見つめたまま黙ってしまった二人に、もう怒っていないからと言って、病院から抜け出す見張りをさせるシーンなど、情けないながらも子供を愛する姿がとてもいいのである。
 また、出ていった妻の気持ちを理解していないとなじりながらも、本当は誰よりも水谷を慕っている永瀬や、事件を捜査しながら男手ひとつで家庭を支えている水谷を心配し、なにかと手助けをする先輩刑事の谷啓はもちろんのこと、出番は決して多くないながらも、草笛光子や市原悦子らの演技も素晴らしい。見事な役者たちのアンサンブルを前に、いつもなら映像に技巧を凝らす市川も、彼らの演技にじっくり寄り添うことにしたのかもしれない。
 谷の人となりや永瀬と浜村のエピソードがもっと描かれていれば、より深みのある作品になっていただろうが、この小品には逆に蛇足なのかもしれない。映像からコクの滲み出た、しみじみとした味わいの佳作である。
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