「コラテラル」を観る。

Category : DVD

 1月24日(火)、DVDにて。
 本作は、現実的に考えると、不自然極まりない物語である。
 だいいち、プロの殺し屋がタクシーを使って五人のターゲットを殺そうとするなど、ありえない。正体がバレないように、自分ひとりで仕事を遂行しようとするのが普通だろう。案の定、すぐタクシー運転手にバレてしまうのだが。
 また、殺し屋なのに、人ごみの中で堂々と標的を殺す。夜の路上で、サイレンサーもつけずにチンピラたちを射殺するし、クラブでは、マフィア相手に派手な銃撃戦を繰り広げる。ボスを殺すならば、物陰から隠れて銃殺するとか、一人になった隙を見て殺すとか別の方法があるだろう。こうなると、映画的なリアリティからも程遠いのである。
 しかし、このストーリーと演出は、監督のマイケル・マンの狙いだ。人々は目の前で暴力があっても、その瞬間ハッとなったり、悲鳴をあげたりするだけで、その後は何も見なかったかのように平然としていたり、死人を気にもせずに逃げたりと、被害に巻き込まれたくないのか、暴力を見ることに慣れ過ぎてしまったのか、とにかく冷淡だ。そのような人々の実態を描くために、どこにでもいるようでどこにもいない、どこか空虚な殺し屋の行動がなければならないのだ。
 このような暴力に無神経な夜のロサンゼルスを、マンは美しくも妖しげな映像で描き出す。その地獄巡りのために、街を知り尽くしているタクシー運転手の存在が必要なのである。
 そして、このタクシー運転手と殺し屋の運命の交錯こそ、本作の要だ。夢を見ているだけの現実から抜け出せずにため息しかつけない男と、不利な状況を行動で切り開き仕事を遂行しようとする男が、互いに影響を受けあう物語は、とても刺激的だ。
 クライマックス、殺し屋から少しずつ勇気をもらい、自分の意思を行動で示そうとするタクシー運転手と、彼に勇気を与えたことによって、逆に自分が破滅することになる殺し屋の運命は、皮肉に満ちており、都会で生きる人々の、まさに寓話である。
 リアルな都市の実態に、二人の男の運命を絡ませたおとぎ話には、殺し屋を演じたトム・クルーズの、存在感があるようで希薄な、匿名的な風貌がよく似合う。
スポンサーサイト

コメント:

非公開コメント

プロフィール

HORIDASHIDOGU

Author:HORIDASHIDOGU
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
アクセスカウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR