「君を想って海をゆく」を観る。

Category : DVD

 1月29日(日)、DVDにて。
 ロンドンにいる恋人に再会するために、ドーバー海峡を泳いで渡ろうとする17歳のクルド人の少年と、彼に泳ぎを教える水泳教室のコーチをしている男の絆を描いた物語。
 いかにもラブストーリーみたいな邦題だが、フランスにおける不法入国者の過酷な現実を取り上げており、やるせないラストシーンに運命の皮肉を感じさせ、むしろ原題の「WELCOME」のほうが作品の雰囲気に相応しい。
 何度も喧嘩しながらも心のどこかでは気になっていて、姿を消した少年を夜の港で探したり、離婚した妻の結婚指輪を少年に手渡して恋人にプレゼントするように励ましたりする男の姿は、人生に疲れたような表情と相まって映像にコクを与えているし、誰もいなくなったプールでクロールを練習したり、荒海を孤独に耐えて力の限り泳いだりと、ひたむきな少年の姿も、容赦ない厳しさを湛えた作品に瑞々しさを与えている。
 しかし本作で最も注目すべきは、冷たささえ漂わせながらも、人間の息吹を静かにすくい取っている映像の佇まいであろう。曇天の下、寒々しい海岸で二人が意見を交わすシーンや、夜の炊き出しに並ぶ少年を見つけ、ホッとして嬉しそうに男が歩み寄るシーンなど、観ているこちらの感情がジワーッと心臓から滲み出るような切なさを感じるのだ。
 決して派手ではないが、作り手がじっくりと、社会問題と人間の運命に真正面から向かっていった、誠実な佳作である。
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