「戦火の馬」を観る。

Category : 劇場公開作品

 3月4日(日)、シネマサンシャイン土浦にて。
 少年の背後に広がる青い空と大きな雲は、まるでジョン・フォード作品のような光景であり、ラストの真っ赤な夕焼けに浮かぶ人々のシルエットは、『風と共に去りぬ』(39)を想起させる。
 劇場パンフレットを読むと、撮影監督のヤヌス・カミンスキーは、これらのシーンがそのような意図で撮影されていると語っているが、戦場に送られた馬を探す一人の若者の物語自体が、フォードの『捜索者』(56)にそっくりであり、監督であるスティーブン・スピルバーグが魅了されたのもよく分かる。
 とはいえ、本作でメインとなるのは、むしろ“探される側”である馬のジョーイであり、もっと正確に言えば、ジョーイに関わる人々の“絆”が物語の軸となっている。
 それは、馬と人、だけではなく、父と息子、息子と母親、兄と弟、老人と孫娘、イギリス兵とドイツ兵・・・と、家族だけでなく見知らぬ者同士が、お互いに少しずつ理解しあってゆく様が、それぞれのエピソードは決して長くなくとも、スピルバーグらしい手際の良い語り口で描かれており、ストーリーテラーとしての彼の力量が充分に発揮されている。
 スピルバーグは、「物語を語る」ことが得意な監督であり、「人間を描く」こととなると、やたらと描写を割きすぎるきらいがあるが、ジョーイと少年の絆をじっくりと描く前半部分があるからこそ、後半で彼らが再会するシーンに感動させられるのであり、彼の「短所」が見事に「長所」に転換している。
 なにより、最も目が引きつけられるのは、大砲が炸裂する夜の戦場を、塹壕を飛び越え、土嚢に躓きながらも、力の限り駆け抜けてゆくジョーイの姿だ。この躍動感こそ映画の肝であり、過酷な状況を必死で生き抜こうとするその姿こそ、本作のテーマでもある“希望”そのものではないだろうか。スピルバーグの新たな傑作の誕生である。

追記(3月6日 火曜日)
1.単調で暗い室内に、赤い花や紫の服をそっと画面に入れた色彩設計や、イギリス兵が枯草の中に隠した馬に一斉に跨るシーンに代表される、意表を突いた画面構成も素晴らしい。
2.『プライベート・ライアン』では、“手紙のバトン”があったが、本作では“大隊旗のバトン”があることで、戦争に巻き込まれた人々の、「生きた証」と「生きることへの希望」が表現されていた。
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