「ドライヴ」を観た(ネタバレあり)。

Category : 劇場公開作品

 3月31日(土)、シネプレックスつくばにて。
主人公のドライバーは、運転中まばたきをしない。オープニングのアクション中、彼はただずっと前を見て、車を駆る。タイトルが出たときにハッとしたのは、彼がまばたきをするからだ。
彼には表情がない。好きになった女性に向かって静かに微笑み、深い絆で結ばれていたエージェントの他殺体を見て涙を流しはするが、監督であるニコラス・ウィンディング・レフンが「半分が人間、半分が機械の男の物語」とインタビューで語っているように、捉えどころのない男なのだ。逃し屋としてはプロだが、敵との交渉となると全くの素人だったり、5分過ぎたら面倒は見ないと言いながらも、女性の夫が撃たれた瞬間に車から身を乗り出してしまったりと、案外スキが目立つのだ。
そんな矛盾を抱えた男が、自分たちを狙う組織にたった一人で戦いを挑む。女性に静かにキスをした次の瞬間、エレベーターに同乗している殺し屋を床にたたき伏せ、その頭を力の限り踏み続けて怒りの感情を露にしたかと思えば、標的であるヤクザを襲撃するときはスタント用のマスクという、無感情の殺人マシーンになるためのユニフォームを装着し、夜の海岸に沈めるという、「動」と「静」の感情が混じり合ったまま突き進んでゆく。ドライバーが着ているサソリの刺繍が施された白いサテン・ジャケットは、制御不能な自分をなんとか抑制し、アイデンティティーを保とうとするアイテムのようにも見える。
ラスト、死んだと思われたドライバーは、まっすぐ前方を見据えた目をゆっくりとまばたきさせ、再び車を走らせる。女性の子供に「まばたきした」と笑っていたが、機械人間の彼にとって、まばたきすることは生きている証でもある。
しかしナイフを熟知した男に腹を刺されて生き延びることなど、寓話でしか成立しない結末だ。夜道を一人運転する名無しのドライバーの姿は、「生きたかった」という孤独な魂の叫びなのかもしれない。
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