「暴力行為」を観る。

Category : DVD

 5月11日(金)、DVDにて。
 過去の記憶を封印して生きる戦争の英雄と、彼に復讐しようとする男、そして二人を取り巻く女性たちの物語。
 フィルム・ノワールといえば陰影の強いスタイリッシュな映像が観る者を魅惑するが、本作での光と影の使い方は、登場人物たちの感情を引き出すことに比重が置かれている。特に、これから自分に降りかかるであろう恐怖に主人公が戦慄するシーンなど、モノクロ独特の映像表現となっている。
 袋小路に陥った主人公に息苦しくなるほど感情移入してしまうのは、演じるヴァン・ヘフリンの、誠実でありながらも常に怯えを張りつかせた表情にもよるのであろう。彼を追うロバート・ライアンの、大柄でタフな狂犬を思わせる雰囲気もいい。二人の重厚な演技がなければ、西部劇を思わせるラストの情動も薄っぺらになっていたに違いない。
『真昼の決闘』(52)や『日曜日には鼠を殺せ』(64)、そして『ジャッカルの日』(73)など、監督のフレッド・ジンネマンは男たちの情念を描くのが上手い。“男性映画の巨匠”と呼ばれることがないのは、本作でのジャネット・リーやフィリス・サクスターのように、女性の心情も巧みに描くことができたからであろう。それぞれの人物を過不足なく物語に絡ませる手腕は、後の『地上より永遠に』(53)に通じる部分もあるのではなかろうか。
 小粒でピリッとしていながらも静かな風格さえ漂わせた、サスペンスの傑作である。


 追記(5/12)
 本作でロバート・ライアンは右脚を負傷しているが、脚を引きずる音がサスペンスになる瞬間が素晴らしい。夜の自宅で恐怖に震えるヴァン・ヘフリンの心情がヒリヒリと伝わってくるのだ。
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