「星の旅人たち」を観た。

Category : 劇場公開作品

 7月6日(金)、ヒューマントラストシネマ有楽町にて。
 マーティン・シーンには旅が良く似合う。
 出世作となった『地獄の黙示録』(79)では、戦争の狂気に次々と遭遇してゆくことで、自分の中にある狂気に呑まれてゆく男を演じていたが、本作では聖地巡礼途中で不慮の死を遂げた息子の想いを引き継いで、自らが800キロの道のりを歩くことで、疎遠だった息子の生き方を理解してゆく父親を好演している。
 なにしろ監督が、シーンの長男であるエミリオ・エステベスなので、父親の魅力の引き出し方は心得ているのだろう。あるインタビューで、本人に似たキャラクターをつくって父親を称えたかったと語っているが、決意に満ちた第一歩を踏み出したかと思いきや進む方向を間違えていたり、酔っ払って周囲に罵詈雑言を喚いて警察のお世話になったりと、とぼけた場面はもちろんのこと、何度も逮捕されているシーンの私生活と重なる部分があり、思わず笑ってしまう。 
 まぁ実際のシーンは社会活動家として逮捕されているのだが、このような展開を嫌味なく演出できてしまうのは、息子の強みでもあり、父への愛があるゆえだろう。スランプ気味作家に真実を書くようアドバイスをしたり、自分のリュックを盗んだジプシーの少年に優しく声をかけて許したりするシーンの姿には、年輪を重ねた人物だけが持つ慈愛に溢れている。
 これはシーンだけではなく、彼と一緒に道を歩く仲間たちはもちろんのこと、地元の警官や宿の主人といった出番の少ない登場人物たちも、ちょっと見ただけで人となりが伝わってくるような手触りの良さがある。もともとは俳優であるエステベスの、長年の経験が活かされたキャスティングの上手さなのであろう。
 長い巡礼とはいえ、少々テンポがゆったり過ぎるのが奥歯に引っかかるが、美しいながらも少し欠伸の出るような景色に彩りを添えるのは、巡礼者たちの身に着ける、青いリュックだったり赤いジャンパーだったりするのだろう。生きることを静かに肯定してくれる、小さな佳作となった。
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