「評決」を観る。

Category : DVD

 7月17日(火)、DVDにて。
 「いい映画だけど、ドラマとして弱いなぁ」というのが、本作を初めて観たときの感想だった。
 それはそうだろう。病院側の弁護士による要害工作に翻弄され、切り札の証言も裁判長に無効とされ、どう考えてもポール・ニューマンの演じる弁護士に勝ち目があるはずも無いのだから。
 ところが、原告側の訴えを認め、要求以上の補償を与えたいという陪審員の評決は、それまでの物語の論理的構築を、一気に壊している。いくらニューマンの最終弁論が情に訴えるからといって、この展開はちょっと違うんじゃないかと思ったものだ。
 しかし再見して、ご都合主義に思えるラストにも、きちんと伏線が張られていることに気づいた。証言台で何の役にも立たなかった町医者が、ニューマンに向かって「人間を見限ってはいけない。時には真実に耳を貸すことがあるのです」と言う台詞がそうだ。
 この台詞は、いくら証言が記録から抹殺されても、真実は人間の記憶から消せないことを物語っている。実に巧みな脚本であり、裁判を何度も見てきた監督のシドニー・ルメットの鋭い観察眼が、人間の心を見事に掬い取っている。
 また本作は、法廷シーンよりも、ニューマン演じるアル中弁護士の奮闘ぶりに焦点を当てており、どうしようもなく不利な状況の中で弱音を吐きながらも、必死になって証人を探し出し、医療ミスで昏睡状態となった女性の「声」を病院に訴え、再び正義を信じようとする姿がとてもいい。
 一見、きれいごとの理想主義映画にみえるが、現実を見てきたルメットの人間への信頼と、正義を実現するまでのニューマンの苦闘にこそ、我々は惹きつけられるのではないだろうか。なにも飾らずストレートに、作り手がメッセージを投げかけているからこそ、この作品は心に響くのである。観る度に味わい深くなる、真の傑作である。
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