「サマーウォーズ」(過去に書いた駄文から・・・その3)

Category : 劇場公開作品

 一方はコンピューター内の仮想世界という、一見狭そうながらも全世界に影響を及ぼす程の無限の広さを持つ空間があり、もう一方は小高い丘に建つ屋敷という、広大な田畑に囲まれながらも隣家が見当たらない、どこか孤立した場所で展開される物語は、インターネットに代表されるバーチャルな世界観への批判を逆手に取った設定で、ある種の爽快さを感じる。
 また、一族をまとめていたヒロインの曾祖母の死という現実世界での出来事に対し、葬式の準備を淡々とこなす女性たちとは逆に、身内の起こした不始末にけりをつけることが曾祖母への供養と考え、コンピューターの前に座り込んで、仮想世界で自分の分身を使って人工知能との闘いを繰り広げる、主人公をはじめとする男たちの姿は、世界の危機とはいえ、自分たちの居場所を発見したかのような高揚感に溢れている。
 しかし物語の終盤に、それらの対比は少しずつ壊れてゆく。人工衛星が屋敷に落下することが判明すると、一族の人々は周辺の人々の安全を心配し始めるが、その描写によって、屋敷が決して周囲から孤立した場所にあるわけではないことが分かるし、人工知能との大勝負ではコンピューターの前で家族が一丸となり、そんな家族の最前線に立つのはヒロインである。
 そしてラスト、凛々しい顔つきをした男勝りの曾祖母の遺影が、主人公とヒロインに芽生えた恋を祝福して微笑むシーンにいたっては、生と死、有機物と無機物の境さえ曖昧だ。
 このような対比の破壊こそが、監督の細田守の意図であろう。現実世界だけではなく、コミュニケーションによって仮想空間も成り立っており、バーチャルな空間に浸っている人間も孤独ではないことがオープニングで示されるが、世の中に埋もれている多様な視点、人間の中に隠れている可能性を発見し、認めることを、この作品は教えてくれる。
 クライマックス、「よろしくお願いしま~す!」と絶叫しながら、自分の力を全身から発散させる主人公の姿が眩しかった。
 
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