「敵こそ、我が友~クラウス・バルビー3つの人生~」(過去に書いた駄文から・・・その4)

Category : 劇場公開作品

 この作品は、ナチス・ドイツで親衛隊保安部に所属し、多くのユダヤ人やレジスタンス活動家を迫害した、クラウス・バルビーについてのドキュメンタリーである。
 第二次世界大戦後、共産主義の脅威を誇大に西側に報告することで、アメリカの庇護の下、バルビーは工作員として反共運動を支え、バルビーをフランス警察の追及から救うために、アメリカ陸軍情報部はバチカン右派の神父たちと協力し、1951年に南米へ亡命させるなど、アメリカはバルビーを利用し、バルビーも生き残るためにアメリカを利用するが、1983年にバルビーが逮捕されると、用済みになった彼をアメリカが見捨てた事実を提示することで、個人を利用するだけ利用して、利用価値がなくなったら助けの手を差し伸べない国家の非情さと、政府を利用していたはずが、逆に政府に利用されていただけだった人物の哀れさと滑稽さをあぶり出し、またバルビーの被害者によって浮き彫りにされる、虫も殺せそうにない柔和な表情をした男が、人々に対して残虐な行為を行なっていたという事実は、「とても優しくて、思いやりがあった」というバルビーの娘の証言との矛盾によって、バルビーを興味深い人物として捉え、そこから人間という存在の複雑さを伝えている。
 しかし作品の展開は、関係者たちのインタビューを多用しているため、映像に変化がなく、冗長な展開になってしまった。オープニングのジャズのリズムにのせて第二次世界大戦から冷戦までの経緯を写真を使用してテンポよく説明し、大戦中はドイツでミサイル開発に協力し、戦後はアメリカでロケットの打ち上げに尽力したヴェルナー・フォン・ブラウンの写真をその説明の中に一瞬挿入するといった、エンターテインメント趣向の演出の中に作品のテーマに関連する人物をさりげなく観客に示すといった手法が他の部分でも使用されていたら、より面白い作品になっていただろう。
 好感の持てる誠実なドキュメンタリーであるが、観客をスクリーンに引きつける工夫がもっとなされていたらと思うと、少々残念である。
スポンサーサイト

コメント:

非公開コメント

プロフィール

HORIDASHIDOGU

Author:HORIDASHIDOGU
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
アクセスカウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR