4月14日(金)、MOVIXつくばにて。
 前作の『トレインスポッティング』(96)の映像が何度も使用されるだけでなく、主人公たちの少年時代も描かれることで、観客も登場人物たちと供に「記憶」の物語へと引き込まれてゆく手法が巧い。
 そんな「記憶」をテーマに、監督のダニー・ボイルは以前に『トランス』(13)を手がけていたが、この作品がフィルム・ノワールであったように、駆け引きや裏切りが交錯する本作は、人生に失望しながらもハチャメチャな野郎たちの物語でありながらも、やはり犯罪映画の雰囲気が漂う。20年前だって、ヘロインと現金を交換する展開なんて、けっこうノワーリッシュだったしね。
 人気のないスコットランドの夜の街で、主人公と彼に裏切られて刑務所にぶち込まれていた凶悪野郎の、フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドの「Relax」をバックにチェイスするシーンが、なんだかダサカッコよくてとてもイイ。そして、掴んでいた車のルーフからブレーキの衝撃で放り出された主人公がニヤッ!とするカットは、インパクトの強かった前作の「記憶」が呼び戻されて、もっとイイのである。
 4月12日(水)、恵比寿ガーデンシネマにて。
 2人の息子たちに率いられた軍勢に命を狙われて絶望し狂ってゆく一文字秀虎を演じた仲代達矢の、死んだように白い肌で痩せこけた頬に目をカッと見開いた表情や、死んだ家来の血が床へとまるで滝のように滴り落ちたり、一文字家を破滅へと向かわせた楓の方を次郎の側近が一太刀で殺した瞬間に血が凄まじい勢いで飛び散ったりと、描写がかなり劇画チックだなぁと感じたが、本作の監督である黒澤明は、以前に手がけた『椿三十郎』(62)で、やはり仲代にカッと目を見開かせて身体からドバーッと血飛沫を上げさせていたので、まぁむべなるかなといったところではある。
 しかし、信じていた家臣にまでも裏切られ、自害しようとしても刀を失ってしまい、鞘だけを引き摺って呆けた顔で荒野を彷徨い、挙句の果てに追放されても自分を見捨てなかった三男までも失ってしまうという秀虎に降りかかる悲劇は、どうしようもなくサディスティックだが、情け容赦なく生きてきた業が自らに跳ね返ってきただけではなく、自分自身もそれまでに数多くの“秀虎”を生み出していたことを暗示させ、背筋を寒くさせる物語である。『天国と地獄』(63)のラストでも感じたが、「非情」を描く時の黒澤の手腕は観客の五感に深く突き刺さり、全くもって恐ろしい。
 そんな人間たちの愚かな行いさえも包み込んで存在する、どこを見渡しても緑色に染まった山々や、不穏な空気を予見したかのように色や形を刻々と変化させてゆく雲のように、自然を捉えた描写がとにかく圧倒的である。
 三の丸が燃えてゆくシーンでの紅蓮の炎も、騎馬隊の疾走によって巻き上がる土煙も、ワンカットにどれだけ黒澤が心血を注いでいるのかがよく分かるのであるが、あまりにもコントロールが効きすぎて、迫力があるとはいえ、“偶然”を取り込んだ映像の驚きが弱い気がしないでもない。前作の『影武者』(80)での真っ赤に染まった空を背景に騎馬武者たちが登場するシーンのような、本編のカットを盗んで持って帰りたいほどの魔力は感じられなかった。
 それでも、途方もないスケールの作品を創造した黒澤の執念に心を打たれずにはいられないことだけは、間違いない。
 4月9日(日)、MOVIXつくばにて。
 原作での春夏秋冬のエピソードを、現実とも夢ともつかない一夜の出来事として描き、作品の最初から最後までフルスロットルだ。それぞれの登場人物たちが体感している“時間”を、季節だけでなく十二支などに時計の数字を変化させることで表現しているところも、演出がタイトルともキチンと合致している。
 また、物語の「起承転結」の「転」でハイテンションであった語り口を一気にダウナーにしながらも、「結」に至る過程で再びテンションをグンと上げ、主人公が自分の気持ちに正直に向き合うことで“恋の一歩”を踏み出す展開が、いかにもテレビアニメの『四畳半神話体系』(10)の作り手たちらしいなぁと感じる。
 学園祭のエピソードは、少し捻りが効きすぎてテンポが少々ギクシャクしているし、作品全体としても速度があり過ぎて、なんだかあっ気ない感じがしないでもないが、登場人物たちの行動を、ポップで、無茶苦茶で、それでいてとても繊細に・・・、つまりは青春映画としてとてもイイのである。
 3月30日(木)、恵比寿ガーデンシネマにて。
 冷たくて退廃の香りが漂っていて、それでいながら耽美な雰囲気を発散させる映像に、否が応にも引きつけられてしまう作品だ。
 特に、段々と歩を速めてゆく主人公と、彼をゆっくりとしたスピードで追ってくる自動車を捉えたカットは、カメラを斜めにして緊張感を演出しながらもどこか優雅であり、2人の女性がタンゴを踊る場面も、森の中で暗殺が実行されるシーンも、とにかく映像の力が圧倒的なのである。
 そして、物語の後半での子供の生まれた主人公と妻の冷え冷えとしたアパートでの生活は、前半での華麗な雰囲気からは程遠く、皮肉なラストまでも包含して、作品の展開そのものを映像のルックが全て表現してしまっているところが、やはり、この映画は放つ冷徹で凄まじい魔力を放っている。
 まぁ、本作のファシズムに傾倒してゆく男の揺らぎは、犯罪映画の主人公としては、けっこうヘタレではあるけれども・・・。
 3月19日(日)、USシネマつくばにて。
 「俳優の映画」である。
 主人公を演じたケヴィン・コスナーは、自分に歯向かう人間を容赦なくボコボコにしたり、順番待ちの列に割り込みして罵声を浴びせたりと、相当にヒドイ奴なのだが、これまでのイメージとは想像もつかない役を引き受けた度胸と、徐々に暴力的な感情が変化してゆくのを演じられる力量がスゴイ。
 また、手術直後でベッドに横たわるコスナーから、彼の脳に移植された工作員の記憶を引き出そうと、激しい口調で質問を浴びせかけるCIAロンドン支局長を演じたゲイリー・オールドマンの迫力と、それでいながら行動がコスナーより一歩遅れてしまう情けないところが、なんとなく『フィフス・エレメント』(97)の頃の彼を想起させた。
 トミー・リー・ジョーンズは、「ちょっと映画に顔出してみました」程度の出番ではあるが、その存在感はやっぱりベテラン。『逃亡者』(93)や『ハンテッド』(03)で演じたような“追っ手のジョーンズ”ではないのは、まぁしょうがないか。ガル・ガドットは、その美しさだけで、もう最高です。
 アメリカの原子力潜水艦や軍事基地のシステムがハッキングされ、いきなりミサイルが発射されてしまうシーンは、登場人物たちが物語を牽引してゆく作品のスケールを崩してしまっているし、後半はかなりゴチャゴチャしていて展開が少々雑なのが残念だが、ラストでのコスナーの佇まいは、ただそこに存在するだけで映像そのものをとてもリッチにしており、『パーフェクト・ワールド』(93)や『マン・オブ・スティール』(13)のような、“いつものコスナー”に戻っているところが、ご都合主義とはいえ、物語ともきちんと連動していてイイ。
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