1月6日(土)、新宿シネマカリテにて。
 意識を失っている間に男から女に性転換された殺し屋の、自分を裏切った組織と手術を施したマッドな女医への復讐という奇想天外な物語は、時折挿入されるグラフィックノベル調の演出によって、「この映画、マンガみたいなものですから」と、監督のウォルター・ヒルは観客に語りかけている。
 また、自らの心情をウェブカメラに残しておこうとする殺し屋と、己の才能とゴーストのような殺し屋の存在を精神科医に記録させようとする女医からは、二人が意図するともしなくとも、まるで“伝説”になろうとするかのようであり、『ザ・ドライバー』(78)や『ストリート・オブ・ファイヤー』(84)で“寓話”を手がけてきたヒルらしい展開ではある。
 しかし、映画の冒頭で事件の顚末がすでに分かっているために、二人を交互に描いてゆく構成が鈍重に感じられてやたらと退屈だし、ヒル作品でガンアクションもあるのだから、二挺拳銃から放たれた銃弾を腹に喰らった衝撃で、「これでもか!」と勢いよく吹っ飛ばされるワルたちも観たかった。
 それでも、雨に濡れた街を彩るネオンを蠱惑的に捉えた描写は、まぎれもなく“ヒル印”であり、珍妙な展開に翻弄されながらも、時としてヒルのスタイリッシュなタッチが炸裂する怪作となった。
 あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
 それでは、新年一発目の映画の感想であります。
 
 1月3日(水)、DVDにて。
 主人公である私立探偵のフィリップ・マーロウの目線で、依頼主であるスターンウッド将軍の屋敷までの道のりがクレジットとともに描写されるオープニングが、一人称で語られるハードボイルドに相応しいのだが、複雑な物語を観客に解りやすくするためか、登場人物たちの回想シーンがかなり多く、展開がけっこうもたつき気味。将軍の長女はカジノで賭けている時に唇を舐めたりしてなんだか下品だが、次女のイカレっぷりはけっこう凄まじかった。
 『さらば愛しき女よ』(76)ですでにマーロウを演じているミッチャムは、ロンドンの空気に染まったためか前作よりちょっとオシャレなっているが、くたびれた表情に信念を滲ませてカッコイイ。背筋もピシッとしてるしね。スターンウッド将軍を名優であるジェームズ・スチュアートが演じているし、『ジャッカルの日』(73)のエドワード・フォックスや『グラディエーター』(00)のオリヴァー・リードといった個性派俳優の姿を拝めるのもイイ。
 自動車が夜の海に突っ込むシーンは、砕け散った車とめの破片がたくさんの飛沫をあげて迫力があるし、マーロウと殺し屋とのアクションは、ポケットチーフとネクタイを結んで給油口に入れて火をつけるところがキレもある。これで物語にもエッジが効いてたらなぁ・・・。
 12月30日(土)、シネマサンシャイン土浦にて。
 ヤクザに顔を殴られた探偵が傷ひとつない助手を見て、「お前、なんで無傷なんだ?」と問えば、「・・・キャラじゃねぇか」と助手が返すところは、ダブル主演である大泉洋と松田龍平の阿吽の呼吸がとてもよく、バディものとして飄々としたおかしさがある。『さらば友よ』(68)のように、二人の友情がサラッと描かれるラストにもジンとくる(オチがあるけどね)。
 また、他のレギュラーメンバーも相変わらず強烈なキャラクターで、チラッと出てくるだけでニヤッとしてしまうところは、シリーズとして続いてきたからこそであり、それでいて、一目見ただけで彼らの人となりが分かるようになっているところは、「一見さんお断り」が多い昨今のシリーズものでは珍しい作りだ。
 物語のキーとなる謎の女性を好演している北川景子は、いかにもファム・ファタール。ただし、悲劇の香りを漂わせているところが、日本的。アメリカでは、男を手玉に取ってクールだしね、“運命の女”は。
 緩急をつけたアクションもあって意欲的だが、映像のトーンが物語に馴染みきれていないところが残念。助手が強敵のズボンをズリ降ろして反撃に出るシーンも、スローモーションによって生み出るはずの「笑い」がイマイチなのが、ちょっとツラかった。
12月22日(金)、シネマサンシャイン土浦にて。

 ネタバレ全開ですので、悪しからず。

 途方もない怪物を誕生させてしまった自らの行動と向き合うルーク・スカイウォーカーは、本作を手がけたライアン・ジョンソンの『LOOPER/ルーパー』(12)の主人公と重なり、巨大なAT‐M6のクラスターを前に立ちはだかるルークを見た時、「ここで話が終わってもいいんじゃない?」と思わせるほど荘厳でパワーを放っているシーンなのだが、後に続くカイロ・レンとの死闘での驚愕の展開を目にすると「そんな途方もない能力があったのなら、物語の最初から使っていればいいじゃないか!」とツッコミを入れたくなったし、なんだか胡散臭げな“東洋の神秘”を見せられたような気分にもなった。レイア将軍の“超能力”にも唖然とさせられてしまいましたよ。
 “特攻”が美化されていたりいなかったりとなんだかチグハグだし、アクションにそれほどキレがあるとも感じられないが、古くなったスピーダーがガタガタと疾走すると、惑星を覆う真っ白な塩の下から真っ赤な鉱物が煙のように立ち上る描写のように、とにかくヴィジュアルがかっこいい場面は多いし、レイが目をつぶってフォースを感じたつもりが、ルークが草で彼女の手をくすぐっていただけだったりと、隙あらばユーモアをガンガンに挿入してくるところもオカシイ。
 そんなこんなを言いながらも、個人的にはヨーダの登場が最もうれしかった。「失敗こそ最高の師」という言葉にもグッとくるし、ちゃんとパペットで演出されている。これこそ最高だ!
 12月9日(土)、シネプレックスつくばにて。
 青白い月光の下、雪山を突き進むオリエント急行を捉えたショットはとても美しく、鏡や窓ガラスを多用して、登場人物たちの恐怖心や容疑者としての存在の不確かさを演出した映像もいい。オープニングの舞台がエルサレムであることが、国籍や肌の色の異なる人々が行き交う列車で起きた事件への“前フリ”として巧みである。
 犯人を見つけ出した後のポアロの決断は、犯罪者の動きを事前に予測して「嘆きの壁」にステッキを刺し、「この世には善と悪しかない」と自信を持って言い放ち、まるで自分が全知全能の存在であるかのような物語前半とは大きく変化しており、己の信念が揺らいで独り苦悩する場面こそ、本作の肝だ。世の中の不条理に巻き込まれた人々と名探偵の「その後」を示唆したラストショットも、「いくら殺されて当然のヤツだったからってさぁ・・・、事件が解決したからって、みなさん、そんなリアクションはないんじゃない?」と感じた1974年版よりも、納得できる幕切れであった。
 物語がもう少しポンポンと展開してほしかった気もするが、異国情緒を漂わせた「旅の映画」でもある本作には、悠々としたテンポでちょうどいいのかもしれない。
 とにもかくにも、ポアロの立派な口髭がグッド。
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