2月24日(金)、シネマサンシャイン土浦にて。
 大空からカメラが下へと移動して、渋滞するハイウェイでミュージカルが始まり、その後に主人公であるセブとミアを映し出すカットは、本作のスタイルを一気に説明しながらも、「この映画はスクリーンを見つめるあなたたちの物語ですよ」と語りかけており、それだからラストで、撮影所のセットのような舞台で展開してゆく“ありえたかもしれない人生”に、“互いに夢は叶えたけれど、選択しなかった人生”を目の前にして、無性に切なくて心惹かれるのである。
 『シェルブールの雨傘』(64)を想起させるカラフルな映像が、ロサンゼルスをまるでパリのように感じさせるが、ミアの車を一緒に探し、彼女が走り去るのを見届けた後、パーティ会場の前まで戻って自分の車に乗り込むセブを捉えたり、退屈な男とのディナーを抜け出して、セブに逢いに行くために、桜の舞い散る誰もいない夜の道を、笑顔をこらえ切れずに駆けてゆくミアの姿は、恋愛映画としてグッとくる。
 そして、グリフィス天文台で、プラネタリウムのスイッチを入れた後、2人の体が宙へと舞うシーンは、『世界中がアイ・ラヴ・ユー』(96)のオマージュでありながら、「ここまでやるか!」と圧倒された。
 後半はちょっと駆け足気味の感はあるが、ミュージカル映画がほとんど作られていない2010年代に、「よくぞやってくれました!」と叫びたくなる傑作である。
 4月19日(水)、USシネマつくばにて。
 オープニングでDCのロゴが登場した時、バットマンの吹替えを担当した山寺宏一が「バットマンのおかげでデカくなった会社だ・・・」とムダに重々しい口調でナレーションしたり、基地に入る時のパスワードが「アイアンマンのバ~カ!」だったりと、けっこう悪ノリしているのが笑える。
 また、これまでに実写化されたバットマン作品のポスターや名場面をレゴで再現しているところも楽しいが、鮫除けスプレーを度々ネタにしていたり、パンチ音が“BAN!”と出たりと、『バットマン オリジナル・ムービー』(66)をかなりイジッており、それでいて「今のネタ、分からない?」みたいな一見さんを小馬鹿にしたようなマニアックな目線ではなく、「分かる人は分かればいいけど、そんな小ネタ知らなくても映画として十分に楽しいでしょ?」といった感じで作られているのもイイ。
 そして、ブロックであるのをいいことに超兵器を瞬時に作ってしまったり、ゴッサム・シティの危機をバカバカくもアツい作戦で回避したりと、レゴならではの演出もきちんとなされている。
 イセイビ(ホントはロブスター?)の丸焼きをレンジでチンしたり、カッティング・クルーの「愛に抱かれた夜」をバックにしてバーバラ・ゴードンに一目惚れしたりと、けっこう寂しがり屋のバットマンだが、『ザ・エージェント』(96)の“You complete me.”が、物語のラストにきちんとリンクして、上出来。バットマンとジョーカーが、互いに“もう一人の自分”と闘っていることも、『バットマン』(89)や『ダークナイト』(08)のようにしっかりと、しかも笑いをブチ込んで描いているのもイイ。
 4月15日(土)、シネマサンシャイン土浦にて。
 監督のルパート・サンダースは、『スノーホワイト』(12)でのファンタジックなヴィジュアルが『レジェンド/光と闇の伝説』(85)を想起させたが、『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』(95)の実写化である本作でも、ケバケバしいネオンに塗れたビル街はアニメの再現でありながらも『ブレードランナー』(82)の未来都市をイメージさせ、リドリー・スコットのSF世界を再現したい欲求があるような気がしてならない。まぁ、それだから、映像はカッコよくても、以前どこかで観たような感じにしかならないのであるが・・・。
 そんなヴィジュアルにリアリティを与えるために、ロケをした香港の街を出来る限り映像で使用しているが、実写の持つ空気感とCGによる加工とのバランスが少々悪い。
 それは、巨大な蜘蛛のような戦車を相手に激しいアクションを繰り広げる主人公の動きが、露骨にCGなので興ざめしてしまうところも同様で、もともと義体なのだから実体にリアリティがなくても問題はないのかもしれないが、やはり実写とCGが上手く噛み合っていないし、それを逆手に取って映像のパワーにしてしまうほどの力も感じられなかった。
 ただし、斬新な映像はなくても、作品としては手堅い仕上がりではあるし、主人公を演じるスカーレット・ヨハンソンは、なかなかのハマリ役。『LUCY/ルーシー』(14)でもラストではコンピューターの世界へと入り込んでゆくヒロインを経験済みであるし(リュック・ベッソンがオリジナルのアイディアをパクッただけかもしれないけど)、人間と機械とのハイブリッドという設定にはピッタリである。
 残念だったのは、「公安9課」のメンバーの描かれ方にムラがあること。最後にいきなり登場してちょっとだけど大活躍してしまうキャラもいるし、ここらへんはちょっと雑過ぎた。
 でも荒巻を演じたビートたけしの、敵に拳銃をガンガン撃ちながら、「キツネを狩るのに、ウサギを寄こすな」って台詞をキメるところはカッコよかったな。
 4月14日(金)、MOVIXつくばにて。
 前作の『トレインスポッティング』(96)の映像が何度も使用されるだけでなく、主人公たちの少年時代も描かれることで、観客も登場人物たちと供に「記憶」の物語へと引き込まれてゆく手法が巧い。
 そんな「記憶」をテーマに、監督のダニー・ボイルは以前に『トランス』(13)を手がけていたが、この作品がフィルム・ノワールであったように、駆け引きや裏切りが交錯する本作は、人生に失望しながらもハチャメチャな野郎たちの物語でありながらも、やはり犯罪映画の雰囲気が漂う。20年前だって、ヘロインと現金を交換する展開なんて、けっこうノワーリッシュだったしね。
 人気のないスコットランドの夜の街で、主人公と彼に裏切られて刑務所にぶち込まれていた凶悪野郎の、フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドの「Relax」をバックにチェイスするシーンが、なんだかダサカッコよくてとてもイイ。そして、掴んでいた車のルーフからブレーキの衝撃で放り出された主人公がニヤッ!とするカットは、インパクトの強かった前作の「記憶」が呼び戻されて、もっとイイのである。
 4月12日(水)、恵比寿ガーデンシネマにて。
 2人の息子たちに率いられた軍勢に命を狙われて絶望し狂ってゆく一文字秀虎を演じた仲代達矢の、死んだように白い肌で痩せこけた頬に目をカッと見開いた表情や、死んだ家来の血が床へとまるで滝のように滴り落ちたり、一文字家を破滅へと向かわせた楓の方を次郎の側近が一太刀で殺した瞬間に血が凄まじい勢いで飛び散ったりと、描写がかなり劇画チックだなぁと感じたが、本作の監督である黒澤明は、以前に手がけた『椿三十郎』(62)で、やはり仲代にカッと目を見開かせて身体からドバーッと血飛沫を上げさせていたので、まぁむべなるかなといったところではある。
 しかし、信じていた家臣にまでも裏切られ、自害しようとしても刀を失ってしまい、鞘だけを引き摺って呆けた顔で荒野を彷徨い、挙句の果てに追放されても自分を見捨てなかった三男までも失ってしまうという秀虎に降りかかる悲劇は、どうしようもなくサディスティックだが、情け容赦なく生きてきた業が自らに跳ね返ってきただけではなく、自分自身もそれまでに数多くの“秀虎”を生み出していたことを暗示させ、背筋を寒くさせる物語である。『天国と地獄』(63)のラストでも感じたが、「非情」を描く時の黒澤の手腕は観客の五感に深く突き刺さり、全くもって恐ろしい。
 そんな人間たちの愚かな行いさえも包み込んで存在する、どこを見渡しても緑色に染まった山々や、不穏な空気を予見したかのように色や形を刻々と変化させてゆく雲のように、自然を捉えた描写がとにかく圧倒的である。
 三の丸が燃えてゆくシーンでの紅蓮の炎も、騎馬隊の疾走によって巻き上がる土煙も、ワンカットにどれだけ黒澤が心血を注いでいるのかがよく分かるのであるが、あまりにもコントロールが効きすぎて、迫力があるとはいえ、“偶然”を取り込んだ映像の驚きが弱い気がしないでもない。前作の『影武者』(80)での真っ赤に染まった空を背景に騎馬武者たちが登場するシーンのような、本編のカットを盗んで持って帰りたいほどの魔力は感じられなかった。
 それでも、途方もないスケールの作品を創造した黒澤の執念に心を打たれずにはいられないことだけは、間違いない。
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